お耳を拝借

お耳を拝借

おっちょこちょいを極めた夫と、時々心が雨漏りする私と、生まれたばかりの娘と。

【重度妊娠悪阻+重度うつ病】生きる保育器だと思って耐えた時間(2)

妊活開始

三ヶ月あれば半数以上、半年もあればほとんどが妊娠するってネットに書いてあったから。

一応まだ二十代で、大きな病気もしたことがない女と、三十代の入り口で、健康そのものな男。

そのうち可愛い赤ちゃんが来てくれるだろうと、妊活を始めたばかりなのに、既に妊娠したようなふわふわ浮ついた気持ちでいた。

地に足がついてないどころか、多分30センチくらい浮いていたと思う。

だって、妊娠中についてのハウツー本まで買っちゃったんだもの。

可愛らしいピンクのアプリで生理周期を管理して、今までお世話になった避妊具の白い箱を引き出しの奥にしまい込んで。

それが私の、いや私たちの、一番初めの「妊活」でした。

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あれ、妊娠しない?

でも、待てど暮らせど赤ちゃんは来ず、代わりに毎月覚えのある腹痛が私を痛め、恒例の八つ当たりが夫氏を襲った。

そんな繰り返しを大体6クールもすると不安が募りに募る。

だって私たちまだ「若い」はず、それで出来ないなんて何かあるんじゃ…。

そう思った私は、婦人科の門戸を叩くことにした。

結果としては失敗だった、初めの通院先選び。

真似しちゃダメな悪い例として、選んだ観点を挙げておく。

  • とにかく近く通いやすいこと
  • 不妊を看板に掲げた所は行きづらいから「普通の」婦人科
  • レビュー・口コミ気にしない

「若いから大丈夫」なんて言われてあまり検査をしてもらえず、何より先生が無神経なタイプで合わなくて、次の通院先へ転院。

  • 少し遠くてもOK
  • 優しそうな!先生のところ
  • レビュー・口コミチェックした

結論から言うと、ここでも妊娠は出来なかったけど、先生がとても穏やかで、そしてきちんと検査をしながら診て下さって、心地好く通い続けることが出来た。

いざ、不妊治療

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まずは私の排卵のタイミングをエコーで見ながら、それに合わせて先生に指定された日に夫婦生活を持つタイミング療法をはじめた。

しんどかったポイントは以下の通り。

  • 卵巣をエコーで見てもらうために割と頻繁な通院が必要(排卵直近は3日に一度とか)
  • 毎回先生にデリケートな部分を診てもらうのがちょっと心にクる
  • 指定された日に夫婦生活を持つことでプレッシャーを感じる(主に夫氏が)
  • 自前のホルモンを補うためのホルモン剤の副作用がつらい
  • ホルモン注射はお尻や肩に打つ筋肉注射で痛い
  • 妊娠しやすくなると聞きどんどん増えるサプリメント(最終的に5〜8種類くらい+漢方薬だったように思う)

でも、だめだった。

落ち込んだけど仕方ない、夫氏と話して次のステップの人工授精へ進んだ。

基本的にはタイミング療法と同じなんだけど、指定日の夫婦生活の代わりに、精製した精子を器具で子宮に入れる方法。

つまり、夫氏が自分で容器に精子を採り、病院に提出しないといけなくなった。

心の柔らかい部分をじくじく噛み続けられるようなつらさ

すごく、頑張った。

出口の見えない真っ暗なトンネルを歩いているみたいで、治療の痛みより先が見えない絶望感に泣かされた。

今まで当たり前のように、未来を描きながら話していた子どもについての会話は、自然とタブーになった。

外出先で小さな子ども連れを見掛けると、夫氏も私も互いにぎこちなく気遣う空気を感じた。

通院先の待合室で見る妊婦さんを羨ましく思い、生理が来るたび泣いて、時には荒れ狂って、たくさんたくさん夫氏と話をした。

壁に投げ付けてお釈迦になったコップ、ごめんなさいとありがとう。

私たちは妊娠しない原因が分からないカップルだったから、どちらかが自分や相手を責めることはなかったけど、もしこれから治療を進めていく中で原因が分かったとしても、全て「二人のこと」として受け止めようと決めた。

「もし、このまま子どもができなかったら?」

「それでも二人で暮らしていこう。」

たとえ子どもに恵まれなくても、私も夫氏もお互いを大切に思えるんだと、恋人時代の綺麗事じゃなく、もっと痛々しい切れ味で感じた時間だった。

そんな時間を経て、私たちは体外受精にチャレンジすることに決めた。f:id:i_wish_heion:20200815102102j:image