お耳を拝借

お耳を拝借

おっちょこちょいを極めた夫と、時々心が雨漏りする私と、生まれたばかりの娘と。

喧嘩(2020夏の陣)②

ちょっと間が空いたけど、続き。


家に帰って、夫氏と娘ちゃんとなんとかやってみてた。


そんな時に、交通事故。

娘ちゃんの寝かしつけのために、夫氏の運転で夜のドライブをしてた時。

娘ちゃんをとんとんしながら、後部座席で私はうたを歌ってた。

突然、車体が揺れる衝撃。

ぱっと窓の外を見ると道路に散らばった鞄らしき物。

うおお~〜!うおお~〜!という、うめき声。

真っ黒の人影らしきものが、むくりと起き上がって歩道まで歩いて、そこに倒れ込んだのが見えた。

頭が真っ白になって、「人!人!!!」と叫んだのを覚えてる。

呆然とする夫氏、私は震える手でスマホを取り出して、119。

震えながら叫ぶように電話した。

それから、110。

夫氏と車から降りて、倒れている人に駆け寄った。

物凄いお酒の匂い。

その人は、手にお札やカードを握り締めて、歩道に寝転んで笑っていた。

話し掛けてもまともに話せない。

お酒のせいなのか、車のせいなのか。

物凄く怖くて、物凄く。


救急車が到着して、警察が到着して。

夫氏が、ようやく口を開く。

「とんでもない事をしてしまった…」


黒いトップス、黒いボトムスのその人は、車道の真ん中に寝転んでいた。

あ。と気づいて急ブレーキ、元々ゆっくり走っていたのもあって、軽い打撲のみで、車もほとんど痛まないくらい。

酔って車道の真ん中に寝転んでいた人を、なんてまさか自分の身に起きるとは思ってなかった。


気付きにくい状況だとは思う。

警察の方も同情的だった。

でも、でも、でも。

本当に、気づけなかった?

多分私がドライバーなら…。


鍵をなくすくらい、お皿を山ほど割るくらい、私が気持ちを上手に持てば2人でやっていけると思っていた。

でも、もしかしたら。

夫の不注意は、私の、娘の、夫自身の、そして誰かの大事な人の命を危険に晒すかもしれないんだ。


それに初めて気づいて、怖くて、悲しくて、どうしたら良いか分からなくて、それでも夫が好きで、娘を抱っこして泣いた。